ダックス! 【小説ブログ】

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天使の協奏曲 第二十一話

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天使の協奏曲 第一話

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             *第二十一話*

 ふとその時、空気に紛れるような声で、エルが言った。

『・・・君は・・・、ボクの知らないこと、いっぱい知ってるんだよね? 人間だから。』

 風が頬を撫でる。私はエルの心中をはかりかねた。

『・・・いつか、絶対教えてね。』

 その言葉を不審に思い、私はエルに言った。

「・・・? いつか? 今じゃなくて?」

 昨日のエルにはなんとしてでも聞き出そうとする強引さがあった。その態度の変わりようが、私には不思議に思えた。

 ふとエルが光る翼を動かし、立ち上がった。それと同時にエルの体から光の粉が舞い落ちる。エルはそのまま一歩踏み出し、ベランダの手すりに手をかけた。そして夜空を見上げていたが、やがてくるっと私の方へ向き直り、言った。

『そりゃあ・・・今すぐにでも聞きたいけど・・・。でも・・・。』

 エルはそこで言葉を区切り、視線を横にそらした。

『・・・君の口から聞きたいんだ。なんか、ボクが無理に聞いても意味がないような気がして・・・。』

 そしてエルはまた目線を私の方へ戻し、ずいっと顔を近づけた。

『まあつまり、香織が話したいことを話してほしいってこと! ボクら友達なのに、なんか昨日は一方的だったからさ・・・。』

 そこまで言うとエルはにっこりと笑った。

                     第二十一話 完

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