天使の協奏曲 第二十二話
初めての方↓
*第二十二話*
私はエルの笑顔を見ながら、ふと思った。
・・・エルを見てると不思議な感じがする。天使ってみんなこうなのかな? まあ、エル以外の天使は見たことないけど・・・。
その時、果てしない闇の中にぽつんと小さな光が見えた。よく見ると光は鳩の形をしていて、ビルの屋上にとまっているようだった。エルもそのことに気づき、光る鳩の方をじっ見つめていた。
突然、鳩がはばたいたかと思うと、ビルの真下へ急降下し始めた。
私は「あっ」と声をあげ、ベランダの手すりに駆け寄った。
『あれ? 君にも見えてる? あの光る鳩。』
エルは急降下する鳩を指さす。
私は小さくうなずくと、一心に鳩を目で追った。鳩はビルの真下へ一直線に飛び続けている。あんなに、キラキラと輝き、目立っているのに、私とエルの他には誰も気づいていないようだ。
やがて鳩は地面にぶつかる寸前でパッと翼を広げ、飛び上がった。そして、そのまま近くの停車しているトラックにとまる。そこまで鳩の様子を見ていた私は、これ以上鳩が動こうとしないのを見て、ホッと一息ついた。すると、同時に疑問が浮かんでくる。
「ねえ、エル。あの光る鳩って・・・。」
と言いかけると、エルは私が何を言いたいのかわかったようで、すぐに説明してくれた。
それによると、あの光る鳩は神様がつくった「聖霊」なのだそう。だから人間の目には見えないのだ。エルも天使なので一応「聖霊」だが、それとは少し種類が違うらしい。
『だから、ホントにボクびっくりしてるんだよ。人間のはずの香織が、天使やあの鳩を見ることができるなんて! もしかしたら神様と会話もできるんじゃない?』
そう言ってクスッと笑うエルを横目に、私は考え込んでいた。
二十二話 完