ダックス! 【小説ブログ】

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天使の協奏曲 第十一話

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 天使の協奏曲 第一話

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            *第十一話*

 男の子はにっこりとすると、私の手を握ったままはばたき、満天の夜空へ飛び出した。私は男の子のスピードについていけず、バランスを崩してしまう。それでも男の子は前へ前へと飛んでいる。手を引かれたまま私はあたりを見た。

  すごい・・・夜の街を上からなんて見たことなかった。こいつ、もしかしてこれを見させるために私を連れてきたの?

『ね、きれいでしょ? 上からしか見られない景色なんだよ!』

 男の子は得意気に言った。そしてゆっくりと速度を遅めていき、やがて立ち止まった。その瞬間、広大な星空が目に飛び込んできた。その雄大さに、私は目を見開く。点々としている星は小さいけれど誇りを胸に堂々とそこに存在していた。ずっと見上げていると、吸い込まれてしまいそうだ。しかし、そんな私をニコニコしながら見る男の子に気づき、私はそっぽを向いた。

 男の子は目をそらした私に顔を近づける。心臓が脈打った。

『ねえ、君。名前は?』

「え?」

『だから、な・ま・え! なんだかずいぶんと一緒にいるのに、お互い名前知らないなあって思ってさ。』

 私は「一緒にいる」という言葉に違和感を覚えた。とても不思議な感じだと思いながら、答える。

「・・・香織。」

 男の子は首をかしげて「カオリ?」と聞いた。私はうなずく。

『へえ、香織ね! わかった! ボクはエル。よろしくね!』

                        第十一話 完

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