天使の協奏曲 第十二話
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*第十二話*
男の子・・・いや、エルは、そう言って遠い彼方を指さした。
「・・・?」
エルはにっこりと笑い、
『いこう!香織』
と言った。私は戸惑いながらも「どこに?」と尋ねる。エルは明るい声で答えた。
『いろんなところ! 大丈夫。香織とボクの姿は誰にも見えないから、怪しまれないよ。』
そう言われ、私が答えられないでいると、エルはさらに続けた。
『お願い。ボクずっと独りでさびしかったんだ! 目を閉じれば神様と話せるけど、ボクは自分と同じような・・・香織みたいな人と話したかったんだよ。だから・・・だから・・・。』
エルは言葉に詰まり、うつむいた。
どうしようか・・・。無視して今度こそ死ぬこともできるけど・・・。どうせまたジャマされるだろうし。もういいや。勝手にさせておこう。
私は小さく「いいよ」と言った。エルは顔を上げる。
「いいよ。あなた・・・エルの好きなところへ。・・・どこへでも。」
私は無表情だったが、エルはとてもうれしそうに『うん!』とうなずき、私の手をとった。
はじめに行ったのは今ではすっかり有名になった東京スカイツリー。エルは最初、私を連れててっぺんまで飛ぼうとした。しかし、私が「寒い」とか、「耳がキーンとする」とか、小言を言い始めたので仕方なくてっぺんに行くのをあきらめ、高いビルの屋上からライトアップされたスカイツリーを見上げることにした。
『つんつんタワーってすっごく高いよね。人間ってなんでこんな大きいものつくるんだろ。』
「・・・つんつんタワー? スカイツリーじゃなくて?」
それを聞き、エルの顔がパッと明るくなった。
『へえ!「スカイツリー」っていうんだあ!ボク、なんて呼べばいいのかわかんなくて、ずっと「つんつんタワー」って呼んでたよ!ありがと、香織。』
・・・「つんつんタワー」って・・・。なにもそんな名前つけなくても、神様と話できるんなら教えてもらえばいいのに。
私は「バッカだなあ」とつぶやき、もう一度スカイツリーを見上げた。
第十二話 完