ダックス! 【小説ブログ】

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天使の協奏曲 第十三話 

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天使の協奏曲 第一話

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             *第十三話*

 次に行ったのは小高い丘のある公園だ。丘の上には一本の木があり、他の木を見下ろすようにたたずんでいた。エルは公園の遊具の中の一つ、ブランコに舞い降り、私に手を振る。

『おーい、これで遊ぼうよ! すっごく楽しいんだよ!』

 私は慣れない体を動かし、なんとかブランコに乗る。その時にはエルはすでにこぎはじめていたが、私はふと思った。

  あれ・・・? 確かエルと私の体って見えないんだっけ? そしたらひとりでにブランコが動くことになるのか・・・。なんかこわいなあ。人がいない夜でよかった。

『どうしたの香織? はやくこごうよ! 楽しいよ。』

 エルに言われ、私はおもむろにこぎ出した。最初はゆっくりなのだが、だんだん速くなり地面との距離が大きくなると、少し腕の力が必要になってくる。私は苦戦しながらも隣をちらりと見てみた。エルは立ちこぎでいかにも楽しそうにこいでいる。

『うわあい! 楽しいなあ! 月にまで行っちゃいそうだよ!』

 エルが乗っているブランコはもうずいぶんと地面から離れている。私が少しうらやましそうに見ていると、エルはふと思いついたように言った。

『あ、そうだ、香織。ボクや君みたいな体じゃないとできない遊びがあるんだ! ちょっと見ててね。』

 エルは立ちこぎをしながらさらにスピードをあげていく。そして、今までで一番高く上がったな、と思った瞬間、エルは手をはなし、大きく空に飛びあがった。私はすぐに落ちると思ったけれど、エルの体は予想以上に高く上がり、こだかい丘にそのまま降り立った。エルはふりむき、口に手をあてて言った。

『どう? 楽しそうでしょう? 香織もやってみてよ!』

 そう言われ、私はしぶしぶブランコのスピードを上げる。案の定、その速さに体がついていけなくなってしまう。

  うっ! はやく手を離さないと・・・! ブランコについていけない・・・。

 そう思い、手の力を少しゆるめた瞬間、つるっと手が滑ってしまった。私の体は勢いよく前に飛び出す。

「うわあっ!!」

                     第十三話 完 

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