天使の協奏曲 第十四話
初めての方↓
*第十四話*
私は思わず目をつぶった。ブランコから手を離し地面に転げ落ちる自分の姿が頭によぎる。しかし、地面に体を打つ衝撃はいっこうにない。体全体に風が当たり続けているだけだ。あれ?と思うまもなく、つま先に何かがぶつかったような、そんな感覚がした。
その時、ふいにエルの声がした。
『すごいすごい! 君、これやったの初めてだよね? なのに、こんなところまで行けるなんて! すごいよ!』
私はエルの言葉を不思議に思い、目を開けた。
その光景を見た瞬間、私は息をのんだ。
え・・・? ここ、木の上・・・? 私、木のてっぺんに立ってる!
私がいた場所は、エルが降り立った丘。しかも、その丘に生えた一本の木の上だった。体を動かすと、乗っている枝がギシギシと音をたてる。私は丈夫そうな枝に移り、木の上から公園を見渡した。
・・・夜の公園か・・・。こうして見ると、そこまでこわくないな。
そう思いつつ、遊具をながめる私に、エルは言った。
『どう? 今の遊び、楽しかった?』
私はエルに視線を移し、考えた。
・・・「楽しい」かどうかはよくわかんない・・・。さっきは目をつぶっちゃったから、ブランコからこの木に飛んだってこともよくわからなかったし・・・。
しばらく黙りこんでしまった私に、エルは微笑みかけた。
『・・・もう一回やる?』
私はちらりとブランコに目をやったあと、小さくうなずいた。
第十四話 完