天使の協奏曲 第十五話
初めての方↓
*第十五話*
それからさらに、私とエルはいろんなところへ行った。
遊園地。
灯台が見える海。
動物達が寝静まった草原。
エルに連れられて、私は昼の世界とは違う夜の世界を見た。
それは、確かに私の知っているものとは違った。エルの誘いを受けたのは、かすかに「こっちの世界の方が良い」と感じたからかもしれない。
『ね、香織。神様から聞いたんだけど、人間って「がっこう」に行くらしいね。君も「がっこう」に行くの?』
草原に寝ころび星を眺めながら、エルは言った。
私は草の海にぽつんとたたずむ切り株に腰を下ろし、小さく「うん」とうなずいた。
エルは上体を起こし、私の顔をのぞきこむようにしてたずねた。
『がっこうってどんな感じ? 楽しい?』
エルは興味津々だ。
・・・学校・・・か・・・。あの頃なら・・・三年前なら、きっと私も・・・。
そう考えた瞬間、鋭い悪寒が走った。
『? どうしたの? なにか・・・。』
エルの言葉をさえぎるようにして私は立ち上がった。よみがえる記憶を必死に頭から追い出す。嫌な汗が伝った。
私は一言「帰る」と言い、エルに背を向けた。
それを見たエルがあわてて追いかけてくる。
『ええ! なんで!? どうして帰っちゃうの?? ま、待ってよ、香織!』
第十五話 完