ダックス! 【小説ブログ】

とりあえずつらつらと小説を書き綴っていくブログであります。不束者ですが精進します・・・。

天使の協奏曲 第十六話

 初めての方↓

天使の協奏曲 第一話

読者案内

            *第十六話*

 エルは立ち去ろうとした私の手を、うしろからつかんだ。

『ねえ、どうしたの? ボク、なんか変なこと言った?』

 私は手をふりほどいて行こうと思ったけれど、エルの目を見ると、なぜだがそれもできなくなってしまった。仕方なく適当な理由をつける。

「・・・今日は・・・、もう、つかれたから。」

 私がそういうと、エルはホッとしたあと、少し残念そうに言った。

『うーん、そっかあ・・・。それならしかたないなあ。じゃあもうかえろっか。』

 私は少し下を向きながら、うなずいた。

 

 あのマンションの屋上まで戻ってくると、なんだか胸からなにかがすうっと消えていって、それがなんだか惜しく感じられた。

 その感情がなんなのかよくわからないまま、私は横たわった自分の体に触れる。すると、今度はえらく簡単に戻ることができた。一瞬ふっと視界が白くなっただけだ。

 そして、私はそのまま帰ろうとする。

 すると、エルが後ろから叫んだ。

『ねえ! 約束しようよ!』

 私は足を止め、振り返る。エルはこちらにはばたいて近づき、少しためらいがちに言った。

『ボクら・・・友達になる・・・って。』

 私は少しその言葉の意味を考える。

  ・・・友達・・・? あれ、友達ってなんだっけ。どういうことをするのが友達だっけ。ええと・・・うーん・・・。

 私が悩んでいると、エルは焦り始めた。

『い、いいでしょう? 香織・・・。』

 いつになく不安そうにするエルの顔を見て、私は小さくうなずくことしかできない。その瞬間、エルの顔はパッと晴れた。

『ほ、ほんとに!? やったあ! じゃあ、ボクら今日から友達ね! うれしいなあ!』

                        第十六話 完

                        第十七話へ