天使の協奏曲 第十六話
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*第十六話*
エルは立ち去ろうとした私の手を、うしろからつかんだ。
『ねえ、どうしたの? ボク、なんか変なこと言った?』
私は手をふりほどいて行こうと思ったけれど、エルの目を見ると、なぜだがそれもできなくなってしまった。仕方なく適当な理由をつける。
「・・・今日は・・・、もう、つかれたから。」
私がそういうと、エルはホッとしたあと、少し残念そうに言った。
『うーん、そっかあ・・・。それならしかたないなあ。じゃあもうかえろっか。』
私は少し下を向きながら、うなずいた。
あのマンションの屋上まで戻ってくると、なんだか胸からなにかがすうっと消えていって、それがなんだか惜しく感じられた。
その感情がなんなのかよくわからないまま、私は横たわった自分の体に触れる。すると、今度はえらく簡単に戻ることができた。一瞬ふっと視界が白くなっただけだ。
そして、私はそのまま帰ろうとする。
すると、エルが後ろから叫んだ。
『ねえ! 約束しようよ!』
私は足を止め、振り返る。エルはこちらにはばたいて近づき、少しためらいがちに言った。
『ボクら・・・友達になる・・・って。』
私は少しその言葉の意味を考える。
・・・友達・・・? あれ、友達ってなんだっけ。どういうことをするのが友達だっけ。ええと・・・うーん・・・。
私が悩んでいると、エルは焦り始めた。
『い、いいでしょう? 香織・・・。』
いつになく不安そうにするエルの顔を見て、私は小さくうなずくことしかできない。その瞬間、エルの顔はパッと晴れた。
『ほ、ほんとに!? やったあ! じゃあ、ボクら今日から友達ね! うれしいなあ!』
第十六話 完