天使の協奏曲 第十七話
初めての方↓
*第十七話*
おおはしゃぎするエルを横目で見ながら、私はかすかにため息をついた。
まあ・・・いいか。「友達」の意味はあとで思い出そう・・・。
そして立ち去ろうとする私に、エルはさらに言った。その声は先程と違い、少し真剣になっている。
『あのさ、香織・・・。もう一つだけ、質問していい?』
私は何も言わなかったが、エルはそのまま続ける。
『どうして・・・、
どうして、自殺なんか、しようとしたの・・・?』
私は答えない。
沈んで落ちてしまいそうな夜の闇、その中で、何も知らない小さな風が私とエルの間を通り抜ける。
私は目を閉じ、これ以上なにも考えないようにして、屋上から立ち去った。
エルがこの時どんな顔をしていたのか、私には知る由もない。
その次の日の夜。
私は部屋のベランダ側にある布団に、体をもぐりこませる。
明かりを消したあとの無音の小部屋が、少し怖く感じられ、頭から布団をかぶる。
布団の中の生あたたかい空気が顔を覆った。
第十七話 完