天使の協奏曲 第十八話
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*第十八話*
その時、ふとあの男の子、エルの言葉が思い浮かぶ。
『だって、ボクは神様の奇跡をみんなに伝えるセラフ・・・いや、“天使”だから。』
『ボクは君を止めなくちゃいけない。助けなきゃいけないんだ。そう神様に言われたんだ。』
『目を閉じれば神様と話せるけど、ボクは自分と同じような、香織みたいな人と話したかったんだよ。』
『ねえ! 約束しようよ! ボクら・・・友達になる・・・って。』
天使・・・神様・・・夜の世界・・・そして、自殺しようとした私。
闇の中で、エルだけが光を持っていた。
信じられないような話だと思う。自殺するつもりが、なんだか死ねなくなってしまった。
しかし、今にもその記憶はどこか遠くへ消えてしまいそうだ。
私はかすかに口を動かす。
「夢、だったのかな。」
聞き飽きた自分の声が響くのを認識したときにはもう、眠りに落ちていた。
なにやら耳障りな音がするのを感じ、目を覚ます。この音を擬音語で表すなら、「コン、コン」となるだろうか。
私は最初気のせいだと思い、目を閉じたが、やがてそれが大きくなっていることに気づく。
不思議に思い、私はゆっくりと体を起こした。睡魔からの攻撃に耐えながら、音のする方―ベランダを見る。
そしてそれを見た瞬間、私はぎょっとした。
「! エ、エル!」
第十八話 完