天使の協奏曲 第五話
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*第五話*
着ている服、肌、髪の色、靴、顔型から体型までそっくりそのまま私だった。
ぴくりとも動かない・・・。どうして私の体が・・・? じゃあ今いる私はなに? まさか私とまったく同じ人がいた、なんてあるわけないだろうし・・・・・・。
男の子が私に『びっくりでしょ?』と言ってにっこりした。
『ボクもビックリしちゃったよ。君、魂だけ外に出てきちゃったんだね! 体だけ残して。』
クスクスと笑う男の子。私はもう声すら出なくなり、マンションに残る自身の体を見つめる。
『いやあ、人間でそんなことができるなんてねえ! ちょっと残念だけど、君はボクと同じセラフじゃなかったみたい。』
少し、しょんぼりとしながら男の子は言う。でも、私はそんなことどうでもよかった。
「・・・そんな・・・じゃあ、死ねないじゃん・・・。」
私はポツリとつぶやいた。男の子は聞こえなかったらしく、首をかしげてたずねた。
『え? なになに? どうしたの? 魂だけ抜けちゃった、なんてやっぱりビックリ?』
「・・・・・・。」
私は唇をかみ、黙りこくった。
ビルが連なる夜の街で、輝く粉をふりまく男の子の姿は目を引く。
闇夜に浮かぶ月と光の粉は星空を舞台に踊り狂い、私の視界を覆い尽くしている。
きれいだ。確かにきれい・・・。でも・・・、わ、たし、には・・・・・・っ!
私は男の子の手をはらい、マンションのフェンスに跳んだ。男の子があわてて追いかけてくる。
『あ! ちょ、ちょっと待って! どこ行くのお!?』
私はフワフワ浮く体をがむしゃらに動かし、なんとかフェンスによじ登る。そのままフェンスから転げ落ちてしまったが、なんとか魂の抜けた自身の体にたどりつくことができた。
「はあっ! はあ・・・っ! はあ・・・っ。」
息を切らしながら、私は体に飛びついた。
その次の瞬間、視界が白銀の世界に変わった。体がフッと軽くなり、意識がとぶ。
第五話 完